「…はい、これ」
「うん、ありがとう」
CDの入った袋を受け取ると伸昭はまた歩きだした
「…つまり、俺はこれからこの曲を聞くたびに秋ちゃんを思い出さなあかんのか」
「ん?なにー?」
「いや、何でもない」
「ふうん…ところであの曲ってなんて歌ってんの?」
「あれ?さっき聴いたんじゃないん?」
「理解しようと思って一生懸命聴いたんだけど、日本人のうちには英語わかんない。」
「でも歌ってるのは日本人だよ」
「英語苦手やねんもん。わからへんもんはわからへんもん。そういう自分は歌詞知ってんの?」
「うん、知ってますよー」
「じゃあ…教えて?」
「んーえっとなぁ…賢い人らは言います。愚かな奴だけが慌てて恋に落ちると。でも、僕は…。」
そこまで言いかけて突然伸昭はくるりと振り返った
「…?」
「…帰ったら一緒に聴く?」
「今日もノブ君の家に居ていいん?」
「キッチンが爆発してもいいなら」
「じゃあ次はうちがご飯作る」
「いいよ、無理しなくて。ほんまはしんどいんやろ?」
伸昭の言葉に躊躇いながらも秋奈は、素直に、頷いた
その帰り道、伸昭の背中で秋奈は遊び疲れた子どものように、温かい気持ちのまま眠ってしまった