まず、デートの日アキが来てくれるかどうかも分からない。
「…何考えてるの?もしかして不安?」
「不安も…あるけど…。」たどたどしい返事。
「たとえアキがこなくてもずっと待つのよ。」
サユは笑顔がないカズヒロに喝を入れた。
カズヒロは、未だ迷っていた。
12月27日。穏やかな冬晴れ。
カズヒロは、少し間を空けて、玄関の扉を開ける。
あのことがなかったら、もっと陽気な自分がいたのに。
カズヒロには、笑顔がなかった。
小さな白愛高校前駅前が集合場所。
カズヒロは、アキがいると信じて、駅に向かった。
アキはその頃すでに駅で待っていた。
しっかり、デートの日は分かっていた。
でも、カズヒロ同様、気持ちは乗らない。
アキの心は、深い闇に包まれていた。すると、
「アキさん?」
その気配…。
『タクヤ先輩…どうしてここに?』
それもそうだ。タクヤ先輩は東京在住。こんな田舎にどうして…。
「い…いや…友達がここにいるから。」
…嘘だった。
「今日はどうしたの?こんなお洒落して。」
『い…いや…ちょっと…。』
アキがたじろいでいると、「デート?」
と聞かれた。
『どうして分かったんですか…。』
「だって…向こうに見えるもん。男の子がこっちに来るよ。」
人通りの少ない駅前。歩行者は目に止まりやすい。
それは、カズヒロだった。