―――病室
拓「翼、お前に頼みがある」
そう言って拓朗は背負っていたギターを前につきだした
翼「…それ…ギター…?」
拓「翼、俺をお前のバンドに入れてほしい」
美「?!」
翼「な…お前を?…歌で?」
拓「いや、違う。こいつで」
そう言ってさらにギターをつきだす拓朗
翼「ギ、ギター?…でも、お前…」
拓「ああ、俺はギターは弾けん。楽器はめっちゃ苦手や。でも…まず聞いてから考えて」
拓朗はギターを出し構えた。そんな彼の行動を翼と美弥は黙って眺めていた
そして、ギターは拓朗の手によって奏で始めた―――
翼「!!…この曲…!」
拓朗の指先から鳴る曲、それは以前9人で演奏した曲、中央で歌う拓朗の隣で翼が弾いていた曲だった
決してうまいとは言えないが翼はその音に衝撃をうけた
あの事故で消えてしまったはずの翼の手によって鳴らされていたあのギターの音色
もう二度と聞けないと思っていた死んでしまった自分のあの音が今翼の耳に拙い音だが確かに響いていた
拓朗が懸命に鳴らすギター
そのギターの音はまさしくあの日の翼の音だった