「ー…」
自分でも肩の力が抜けるのを感じ,この上ない安堵感に包まれた。
−ワスレテイタキオク−
私は再び目を瞑った。
「安心していいんだ」
まるで私に聞かせるような庄司の言葉で,庄司は私が起きていることに気付いているのだと察した。
恥ずかしいのと,照れ臭いのとで居たたまれなかったが,庄司は全く気にしていないようだった。
「肩に力入ってたから顔も強張ってたんだな」
「…」
最後にポンと弾みをつけ,庄司の手が離れた。
時計は7時半を指していた。
木洩れ日が辺りを照らし,小鳥の囀りとサワサワと軽やかに微風が吹いている。非常にゆっくりと朝の訪れを感じた。
ここ1カ月程は朝を迎えるのがこわくてたまらなかった。照らし出される"現実"を目の当たりにするのに耐えられなかった。
朝を清々しい心地で迎えられたのは何時振りだろう。