それは突然やって来た。
一目見ただけでこんな気持ちになるなんて本当に予想外のことだった。
壇上に立ったあの人をーーーーーー少し緊張した顔で挨拶をするぎこちない声、姿をただただ見つめた。
三浦真稀(みうらまき)は一瞬で恋をしてしまった・・。
「えーと・・。初めまして。今日から1週間、このクラスの担任となる秦野聡史(はたのさとし)です。教科は数学です。よろしくお願いします」
そう言ってスーツ姿に身を包んだ秦野は頭を下げる。黒板の前に立って生徒を見渡すその表情は固かった。
「よろしくお願いしま〜す!」
女子が大きな声で一斉に言った。
それを聞いた秦野は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃぁそういうことで、よろしく頼むよ」
ドアの脇に立っていた担任の厚木義一(あつぎよしかず)は秦野に肯いて見せた。
それを認め、生徒に照れたように笑う秦野から真稀は目を離せずにいた・・。