「ちょっと待っててね」
そう言って1人で綿菓子を買いに行った幼なじみを止める間もなく見送る。
一緒に行こうと思ったが幼なじみはもう屋台のおじさんと話している。
また2人で来たのかい、おじさんのにやけ顔がそう言っている。
喧騒の中、ふと星空を見て思う。この夏祭りに幼なじみと来るのもちょうど10回目か……。
あの時もこんなふうに――――――――――――
「ちょっと待っててね」
入口付近で近所の奥さんと話し込む母親に言われた。
子供の俺は言葉通りちょっとしか待てなかった。
なにせ話しが短くないのはわかっていたし、初めてきた祭には魅力的な物がありすぎた。
道行く人がもつ綿菓子やりんご飴などの食べ物。人垣が出来てる射的や金魚すくいなどの屋台。
それに祭に行きたくないといた父親が母親に隠れてこっそり渡してくれたお小遣がある。それををにぎりしめて人混みの一員になるべく一歩を踏み出した――――――――――――