「役立たず?」
真面目に返事をされてカイは自然に興味をもった。
「魔法使いに役立たずもくそもあるのか?」
サラはそれまで固く閉じていた口を開いた。
「私は幼い頃…両親を妖魔によって殺されたの。そして私だけは偶然いた魔法使いに助けられ、魔法はその人に教わった。」
「……」
カイはなんと言うべきか悩んだ。
「私には魔法使いの才能がある…とその人は言ったけど、何年しても上手くはならない。」
そしてサラは悲しげに笑った。初めてカイが見る表情だった。
「それにもともと魔法使いになるつもりもなかった。その人は確かに私の命の恩人ではあるけれど、とても強欲な人で私は好きじゃなかった。」
「…じゃあ、なんで魔法使いなんかになったんだ?」
「私には、それしか生きていくすべがなかったから。」
まるで他人事のようにあっさりとサラは言った。そしてゆっくりと立ち上がり、その場を去る。
「あ…おい…」
ひとり残されたカイは結局サラに声をかけれなかった。
そして次の日になると町からサラの姿を見なくなった。
「やっぱり嘘だったのかしら。」
アリスが残念そうにつぶやいた。不思議と怒りはない。
「……」
しかしカイは昨日の話を思い返す。
嘘じゃないと思った。あの無表情だったサラが昨日見せた悲しげな顔は嘘じゃないと思った。
「俺…ちょっと探してみる。」
カイは町中を走りまわった。しかし、サラの姿はない。
あきらめずにさらに探した。
するとようやく町はずれの枯れ井戸でサラを見つけた。
「こんな所で何やってんだ?」
サラは井戸の底をじっと見つめている。
「この井戸…どこまで続いているの?」
「ん?地底の水脈まで続いてるけど、水脈も枯れてるらしいぜ。」
「ここから水の力を感じる。枯れてるなんておかしい。」
気になってカイも井戸をのぞいた。やはり枯れている。
「何か他の力が働いているのかもしれない。もしかすると妖魔がいるのかも。」
「えっ!」
「妖魔がいるとしたら退治しなければこの町も危ない。」
サラがそう言った矢先。
「カイさん大変だっ!」
少年が大慌てでこちらに走ってくる。
「突然地面から怪物が出てきて大変なんだ!」
「すぐ行く!」
カイはもちろんサラも向かう。
「あれは…」
サラは眉をひそめた。地面からトカゲに似た大きな生き物が体を出している。
そしてこともあろうに逃げ遅れたアリスを地面に連れ去っていった。
「アリス!」
カイの叫びがむなしく響いた。