09.
「死んでもらう」
トドロキは低い声で言うと、懐からナイフを取り出した。
刹那、トドロキの姿がその場から消え、ケイゴの正面に現れる。
ケイゴに避ける間を与えない程の速さで、トドロキは握っていたナイフでケイゴの右腕を切り裂く。
(早いっ!)
ケイゴの右腕からは鮮血が吹き出て、ケイゴは右腕を抑えてトドロキに向かって蹴りを繰り出した。
しかしトドロキはそれを避け、またしても2人の前から姿を消した。
だが木箱の山から足音がして、その方を向くとその山の頂上にトドロキの姿があった。
「次は女の方を斬ってやるよ」
トドロキは不気味な笑みを浮かべて、ケイゴの血がついたナイフを舐める。
「ケイゴ、大丈夫?」
「……あ、ああ。へーきへーき」
レイは目線をケイゴからトドロキに移すと、右手を突き出してサンダーオーブを連続して放つ。
しかしトドロキはそんな攻撃をもろともせず、避けながらレイの方へ向かってくる。
そしてトドロキがレイの正面に来たとき、レイは紙一重でナイフを避けて避け際に電気の槍を放った。
トドロキの不意をつき、電気の槍はトドロキの左腕をかすった。
「くそっ……よくも……」
着ていた毛皮のコートに傷をつけられたのが気にさわったのか、トドロキの目つきがさらに鋭くなり、それと同時にトドロキから放たれる威圧感が重いものとなる。
コートを脱ぎ捨てたトドロキは目にもとまらぬ速さで移動し、ナイフを構えてレイに襲いかかった。
(やばっ、避けきれない!)
「レイ!」
ナイフはレイに届くことはなかった。
レイを庇ったケイゴがその刃を素手で握って止めていたのだ。
「ケイゴ?!」
レイの声を背に、ケイゴはナイフを握ったままトドロキの手を掴み、反対側の手で拳を作り力を込めた。
「いてえっつーの!」
そう言い放つと、ケイゴはトドロキのみぞおちに拳を食らわせた。