少年は空を眺めていた。
家の近くの土手。寝そべってただ空を眺めていた。
高校最後の部活も終わり、残った夏休みをただ無為に過ごしている。
本来なら高校最後の夏休み、友達と海に行ったりどこかに遊びに行ったりと遊びつくすのだが、やる気がおきなかった。
やりたいことなんて何もない。このままみんなと同じように大学に行き、みんなと同じように普通の人生を歩む、そう考えると何もかもがつまらなくなる。
仲の良い友人は皆やりたいことを見付けているか、または普通を受け入れ自分の道を歩んでいた。
少年は毎日のように空をぼんやり眺めていた。
夏休みもあと半分、しかし少年は相変わらず土手に向かう。
土手に着くと今日はいつもと違った。先客がいた。20代後半ぐらいの痩せ細った男がそこで横たわっていた。
関わり合うのはめんどくさい。そう思い、少年は自転車をもときたほうへ戻そうとした。
しかし、その矢先男が話しかけてきた。
「少年。いつもここで寝てるよな。今日はいいのかい?」
やはり、変な男だ。関わり合いならないほうがいい。少年はそのまま自転車を家路へと向ける。
「おいおい、無視するなよ。俺は君を待っていたんだから。」
幸か不幸か、少年の普通はこの出会いにより大きく壊れていった。