「…………あぁ〜、いったぁーい」
わたしは頬を擦りつつ、職員室から出た。
「左藤先生の意地悪ぅ〜」
わたしの頬は今現在、赤く腫れている。
担任の左藤先生は、少し気に入らない事があると、すぐ殴る。
でも、左藤先生曰く、加減されていて……本気を出されるのを怖がって、誰も何も言えない。
左藤先生に殴られ慣れたせいか、他の先生に睨み付けられたり、怒鳴られても、平気になった。
「これは喜んでいいのかなぁ……」
思わずため息が出る。
「あの……」
不意に、後ろから誰かの声がした。
「何です…………え?」
「職員室の場所って、判りますか?」
振り向いた先にいたのは、一人の男の子だった。
「――――」
その男の子をみて、わたしは一瞬、思考が停止した。
「……どうか?」
「え!あの……こ、こっち」
わたしは、自分の頬が熱くかるのが自分でもわかった。
――――そんなはずない。
自分で自分に言い聞かせる。
そう。
そんなはずがない。
10年前の“四つ葉のクローバーの約束”の男の子と、こんなそっくりな子なんて!
「じゃ、じゃあっ、わたしは……これで」
「え、ちょっ――――」
職員室前に男の子を置き去りにし、わたしはその場から逃げるようにして去った。
いや。
逃げた。