「君を待っていたんだ。小野寺戒くん。」
少年は振り返り男を見た。この男が自分を待っていたことよりも自分の名前を知っていたことに驚いた。
「まあ、こっちに来て座ってくれ。君に話したいことがあるんだ。」
関わり合いにならないほうがいいことはわかっていた。
だけど、この男ならこの普通の人生を変えてくれる、そんな気がしていた。
戒はゆっくりと男の横に座った。
「おじさん、どうして俺の名前を知ってるの?話したいことって何?」
「おじさんじゃないが、君の質問には答えよう。君の名前を知っていたのは君が選ばれたからさ。話したいことっていうのはこれからゆっくり説明するよ。」
男は笑みを浮かべながら答えた。戒にはそれが少し気にいらなかった。
「ところで君は魔法があるって言ったら信じるかい?」
突拍子もない話だ。そんなもの信じるわけがない。
「そう。今どき幼稚園児でもそんなことを言ったら馬鹿にされる。でもね世の中にはいるんだ、ないと証明されない限りあるかもしれないと思う馬鹿は。」
男は空を見つめていた。まるで昔話をするようだった。