10.
みぞおちを殴られたトドロキは、ケイゴの拳の衝撃で後ろに飛ばされ、それを見たレイは地面に両手をつき、電流を地面に伝わせてトドロキの方へと這わせる。
トドロキが着地した時、トドロキの足元は電流によって囲まれていて、その電流は真上に向かって音を立てて伸び、トドロキを包み込むようにして降ってくる。
逃げ場がないトドロキは電流を受け、その場に倒れた。
戦いにようやく決着がついた瞬間だった。
「ケイゴ、大丈夫?」
「ああ」
ケイゴは倒れているトドロキに近づき、手錠をかけようと手を伸ばした。
するとその時、カッと目を開けたトドロキは懐から小型銃を取り出しケイゴに向けた。
「死ね! くそガキ!」
だがケイゴはトドロキの手を一瞬で払い、首に手刀を食らわす。
「か、はっ……」
再びトドロキは地面に伏し、気を失った。
「執念深いわね」
「……ああ」
レイは倒れているトドロキを見て呟くと、ケイゴは小さな声で返事を返した。
「さ。麻薬回収しよう」
ケイゴにそう促すが、ケイゴはトドロキに視線を落としたまま動かない。
(何よ。まったく……)
レイは小さくため息をついて、一人麻薬回収に向かった。
「最悪だ……くそっ……」
ケイゴは斬られた右腕を押さえて奥歯を強く噛みしめた。
*
「おつかれさん。ちゃんと残らず回収してきたんだろーな?」
「はい。一つ残さず」
「ならよし!」
情報局。レイは一人リュウカに報告を済ませ、自室に帰ろうと出口へ向かおうとした。
「ケイゴはどーした?」
「帰ってきてから部屋に籠もってます」
レイが声をかけても返事もせずに、物音一つたてないで部屋にいるのだ。
「あっそ……じゃ、解散」
リュウカはそう言うと、モニターの方へ向かい作業を始め、レイは自室に戻るため情報局の扉をくぐった。
*
「何なんだよ……」
そう呟いたケイゴは、部屋の片隅で傷をおさえていた。
そして思い出されるのは、6年前のあの日の記憶──