アイの実は、どんな味?3

萩原実衣 2011-04-05投稿
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俺は、差し出された服を見て、嫌な予感がした。(たぶん…当たってる)
「君、名前は…?」
「村上秦です。」
「いくつ?」
「26…。」

「えっ…。意外といってるんだ…。20歳くらいかと思った」

その人は、ややひきつっていた。

そう、俺は、モデルにさせられるようだ。


「完璧!!」
スタイリストの人は、自分の仕上げっぷりに満足していたようだが、俺は、七五三のようで笑ってしまった。

「(トントン)入るわよ。出来た?」

「どう?完璧でしょ?」

スタイリストとプロデューサーは、ハイタッチをすると俺をスタジオへ連れていった。

そこは…。

異世界だった。


俺の緊張が一気に高まり、それからしばらくあまり覚えてないくらいドタバタと事が進んだ。

「お疲れさま」
そんな声がこだましはじめると俺は、ようやく自分を取り戻した。

(あっ時間…。)

時計を見るとまだ45分しか経っていなかった。

バイト服に着替えると
「失礼します。」
女性が入ってきた。

「これ、バイト代とうちのプロダクションの名刺…。」

振り向きながら、俺は、返事をした。
「あっ!」

そこには、朝の悪夢のデカ女がいた。

向こうも俺の表情を見て驚いていた。


「バイトってあんたなの?」
「あんたなんて言われたくないけど。」

あのデカ女に…。
1日に二度も…。
それもよりによって、モデルがうじゃうじゃいる中コイツに会うなんて…。

(今日は、仏滅か?赤口か?)

女は、ふて腐れたように話し出した。
「私、北條 織(しき)この名刺のプロダクションの社長秘書をしてます。社長が、後日またご連絡したいとの事でしたので、ご連絡先を教えて頂きたいのですが。」

朝とは別人のように冷静で物静かな様子で話してきた。

俺は、とりあえず、バイト代も入ったし、ピザの注文も取れるかもと思って、連絡先を教えた。

バイト先に戻るとたもっちゃんは、ひつこく合コンネタを求めてきた。

(最悪の1日が終わろうとしていた)

何だかとても疲れた俺は、滅多に寄らないカフェに入った。

カプチーノと灰皿をもらい席を探しているとそこには、あのデカ女…。
いや、北條織がいた。
「どうも…。」
「どうぞ」

俺は、黙って カプチーノを呑みながら煙草に火を付けると…。

そこから、無言の時間が流れた。

(厄年でもないのに…。)と思いながら今日1日濃かったなぁと笑ってしまった。

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