「それは気の遠くなるような時間が流れたよ。そして彼は生涯を通して研究を完成させた。」
−研究を完成させた?−
−それってつまり…−
「魔法を完成させたってことか?そんな話…」
信じられるわけがない。
普通を抜け出したいと思う戒でも、そんな馬鹿げた話は鵜呑みにはできない。
戒は顔をしかめた。
「信じらんないのは当然さ。魔法と聞くと誰もがゲームや漫画の世界のものと考え、現実とは区別する。君たち、いや今世界にいるほとんどの人がそう思うように仕組まれているからね。」
男は少し嬉しそうに話を進める。
「そういった先入観や刷り込みを取り除くことからこの研究は始まる。魔法を科学とは相反するものではなく、現在の科学では発見されていない未知の力、いわゆる超能力みたいなものを想像してくれていい。それを俺たちは魔法と呼んでいるのさ。」
先ほどよりは現実味が出てきたが、それでもやはりそんな話は信じらんない。
「ここまで話しても信じらんない。まあ、当然か。じゃあ、見せようか。魔法を。」
男は少し面倒くさそうな顔をして、ゆっくりと立ち上がった。
目を瞑り、両手を前に掲げた。
−まさか、本当に…−
戒を男のほうをじっと見つめていた。