「じゃあ、次に期待するけど、本当に大丈夫?せめてランクは『B』くらいまで戻さないと、この時期やばいから。」
「はい。失礼しました。」
職員室を出ると、明日香がいた。
「あっ…、」
しのたくは気さくに話し掛けた。
「また分からないことある?教えてあげる、数学だっけ。」
「違うの。」
「…それじゃあ進路の話?先生の前に俺に聞いておきたいとか?」
「違う。」
明日香はしのたくを責めた。
「私、なんで篠原くんが先生に呼び出されたか、分かるよ。」
「お…俺のことは、いいんだ。」
「私に教える時間が多くなったから、模試の結果が下がったんでしょ?」
明日香は涙ぐんでいた。
「もしそうなら、私はもう篠原くんに…」
「違うから、それは違う。」
しのたくは必死に否定した。
「俺の勉強不足だ、ただの。」
遠ざかるしのたくの背中を見て、明日香は涙がとまらなかった。