サマーインパクト 2

碓氷蓮 2011-04-09投稿
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二話 「蝉、さざめく。」



全く状況が把握できない。


もう平静を保つことは出来なかった。


「なっ、なんなんだよっ!俺を帰してくれよ!」


「悪いけど帰せないわ。今、国は・・・いや、世界はあなたを必要としているのよ」


必要としている、何故かその言葉が深く刺さった。


「必要・・・?俺が・・・?」


「まあ、見てなさい」


隊長らしき人物の号令に合わせて数台の戦車の轟音が重なり、耳を貫く。



弾は確実に巨大なセミに直撃した。


「嘘だろ・・・」


どこからか兵士にしては弱々しい声が聞こえる。


爆発により舞い上がった塵の間から見えるセミは健在だった。


「言ったはずよ、メガインセクトに人間の作った兵器は利かないって」


サヤの言葉を聞いた先ほどの隊長が隊員に慌てて命令する。


「か、火炎放射器用意!」


火炎放射器を手にした隊員たちはセミにゆっくりと近づく。


「発射!」


しかし紅の炎はセミには当たらなかった。


セミがかわしたのではない。


火炎がセミからそびれているのだ。


それと同時に砲撃の音をも遥かに凌ぐ強烈な音が耳を、三半規管を刺激する。


シンヤだけでなくその場にいた者全員が倒れこんだ。





「た、助けてくれ!」


男の叫び声で目を覚ます。


平衡感覚が回復してないため、ふらつきながら立ち上がる。


シンヤの視線の先には尻餅をついた兵士と巨大なセミがいる。


先ほどより近づいて、目前にいるセミに腰を抜かしてしまう。


よく見ると尻餅をついている兵士はさっきの隊長だった。


その隊長を漆黒の、感情を感じない瞳が睨み付ける。


そしてその強靭な顎が隊長を喰らう。


血が吹き出し、言葉に著せない叫び声をあげた後、男は力尽きた。


肉を、骨を引き裂き砕く音が回復しつつある耳に入る。


食べ終えた怪物の黒い目玉が次の獲物を探す。


こっちを見るな・・・!


こっちを見るな・・・!


セミと目があった。

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