サマーインパクト 3

碓氷蓮 2011-04-10投稿
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三話 「槍、目覚める。」



ふらつきながらも逃げようとする。


だが先ほどの音からなのか、それとも恐怖からなのか足が思うように動かない。


そんなシンヤの焦りも知らず、セミはゆっくり地面を揺らしながら迫ってくる。


「だ、誰か・・・!」


辺りには誰もいない。


一段と地面の揺れが激しくなる。


「誰か!」


揺れが止まった。


何が起きたのか、シンヤはゆっくりと首を回す。


大きな黒い目玉がすぐ近くにある。


その顎からは血の匂いがする。


「うわああああぁぁぁぁ!」


シンヤを砕くはずだった顎は空振りした。


シンヤは腕を強く引っ張られるのを感じて、見上げる。


「サヤさん・・・」


「何ボーッとしてるの?!死にたいの?!」


サヤは震えるシンヤを強引にワゴン車に押し込んだ。


「戦闘機が時間稼ぎしてる間にざっと説明するわ」


窓の外を見上げると戦闘機がセミと交戦している。


「見てもらった通り相手には通常兵器が利かないわ。炎や雷、水、氷とか自然の力を利用したら少しのダメージは与えられるわ。でもそれじゃ効率が悪いの」


サヤが外を見るように促す。


戦闘機は放水や火炎放射でセミを攻撃している。


だがあまりダメージを受けているとは思えない。


せいぜい足止めになるくらいだ。


「んで、私たちが開発した対メガインセクトの武器、それが波動兵器よ」


「波・・・動?」


「ええ、物質がもつ振動するエネルギー、気やオーラとも呼ばれるわ。あなたは波動が他の人間と比べて桁違いに強いの。これがあなたが国に選ばれた理由よ」


「波動が・・・強い?」


「やってみれば分かるわよ」


そう言うとサヤは車から降りるよう促す。


降りてしばらく待つと、サヤが何かを取り出してきた。


長さはサヤと同じくらいの錆びれた鉄のような棒。


いや、先は尖っている・・・槍だろうか。


「これが波動兵器の一つ、ヴァイブランスよ」


サヤが槍を差し出す。


槍を手に取ろうとした刹那、何か電流のようなものが手に、胸に、頭に、足に広がる。


しかしそれは心地よく感じた。


槍を握りしめる。


先ほどの感覚がより強く体を駆け巡る。


「これが波動兵器の真の姿・・・」


錆びれた槍は蒼白い波動を纏い、変形し太く勇ましい槍へと変貌した。

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