『奈央。』
あたしの名前を一言そう呼んでから、
母は、じっとあたしを見つめ、こう言った。
『好きよ。お母さんが、奈央の次に好きな人よ。』
『お母さん‥‥。』
ニコニコしながら言われると――
そんな笑顔で言われると――
『お母さんてば。
なんか調子狂っちゃうよ。
そんな言い方ずるいよ。』
『どうして?
お母さん、奈央に本当の気持ちを言ったわよ?!』
『そう‥‥だけど‥‥‥。』
納得がいかない顔のあたし。
そんなあたしを見ると、
母は、笑いながら窓の外を眺め、
再びあたしを見て言った。
『お母さんの事、心配してくれてありがとう。
お母さんも、奈央には本当の事を話すから心配しないでね。
だから、奈央は聖人君とクリスマス、楽しく過ごしておいで。
ふたりで!!』
ドキッとした――
『お母さんっっ‥‥
何でっっ?!
ふたりってっっ???』
知ってたの?!
どうしてっっ???
『ふふ‥‥。あんたの顔みてれば分かるわよ。』
信じらんない。
『別に隠す理由ないケド‥‥。
お母さんに余計な心配かけると思って‥‥‥。』
母ってすごいと思った。
『お母さん、奈央の事、信じてるからね。
言いたい事、分かるわよね?』
『うん。ありがとう。』
そんな母には幸せになってもらいたい。
『奈央。』
『え?!なぁにお母さん?!』
少しは自分のコトだけ、考えてもいいんだよ。
『エッチした?』
『しっ‥しっ‥‥してないよっっ!!』
あたしも、
母と聖人と、どちらが大切かって聞かれたら、
二人とも、
とても大切なヒトだケド――
『しつこいかもしれないけど、自分を大切にする事!!』
『お母さんの言いたいコトは分かるケド!!』
産んでくれたヒトは、
ただ一人だから――