知っていくうちに、心が砕かれていく。
もう、涙も出なかった。
『言ってくれて…ありがとう。』
「…うん。」
アキが言えるのは、これくらいしかないが、カズヒロの心の痛みを感じ、やっぱり涙が溢れてきた。
その涙には、カズヒロにたいして同情以上の価値がある涙だった。
「あんな男に…アキが遊ばれてたまるか…ってんだよ…。俺が…俺が…絶対に…。」
カズヒロは泣き崩れて言葉になっていなかった。
『私も…カズヒロを守りたい。』
「えっ?」
『私もタクヤ先輩にそんなことを言われて傷ついているカズヒロを守りたい。』
「…ありがとう。」
ふたりの仲が、確実に深まっていった。
それから2人は、ファミレスを出て、
浅草に行った。
「ああ〜。スカイツリーが見えるぞアキ。」
テレビではよく報道されているが、実際に見たのはこれが初めて。
『うわ…高い…。』
「高さ634メートル。自立式電波塔としては世界一らしい。」
『すごい、上まで見るのに首が疲れるよ〜』
アキは冗談混じりにつぶやいた。
「でもほら、スカイツリーもいいけど、浅草といえば…。」
『雷門でしょ?』
そのすぐ近くに、雷門があった。