「気づけないって、なんですか?」
意味がわからず、僕は聞き返した。
「春、お前さっきの二人組に会う前、違和感を感じなかったか?」
違和感…そういえば感じた。あの違和感は、人の気配の無さだ。
「街の中に、人気が感じれませんでした。」
「それと似た類いだ。」
「ノックくん、それでは説明になってないよ。春くん、信じられないかもしれないけど、ちゃんと聞いてくれるかい?」
「ちゃんと、聞きます。なにか、理由があるなら、ちゃんと聞きます。」
「わかった。単刀直入に言うよ。あれは魔法だ。」
何を言ってるんだ?この人は。そんなものがあるわけがない。納得がいく内容を話すのかと思えば、なんてバカげた話だ。
「バカげた話だと思うか?ならさっき扉をくぐったときのこと、説明できるか?」
「あれは…たしかに説明できないですけど、だからって魔法なんて非科学的なものを信じろって…」
「それは表の話だよ。春くん。」
伊島さんが冷静に僕の言葉を遮るように話し出した。
「表の世界では、ただのファンタジーとして思われている。だけど、数十年前に裏ではその存在が確認されたんだ。」
「俺が使ったのは、一種の空間転移、テレポートみたいなもんだ。」
空間転移、それなら証明できる。だけど、そんなことが…
「本当の…ことなんですよね?だとしてもそれと事件の関係性がわかりません。」
「それについても、今からきちんと説明するよ。」