なんだ?き、聞いてない…。
雑誌の表紙になるなんて。
そういえば、デカ女の過去に関心が行き過ぎて…いい加減に社長の話に頷いてしまっていたような…。
ややばい。
もう後戻りは出来ない事の覚悟をしなければいけないような気がする。
とりあえず、バイト先に向かった。
「シン!!なんだよお前モデルになったのかよ!」
「いや…。これは…つい弾みで…。」
「すっげぇよ!オレサイン貰っとこ!くれ」
一夜にしてすっかり有名人になってしまった。
仕事にならず、俺は、バイトを早退した。
その足で事務所を訪ねた。
「秦くん!大評判で問い合わせ殺到よ!どうする?このまま、辞める?それとも、自分の可能性に賭けてみる?」
俺は、俺を知りたくなった。そして、デカ女がどれほど凄いモデルだったのか…感じたかった。
「やります!」
「OK!」
「じゃあ、これからあなたのプロフィール用の写真撮るわよ」
「北條!スタジオ抑えとスタイリスト呼んで!あっそれと、カメラマンは、安堂さんで」
「わかりました」
デカ女は、一礼するとすぐに連絡を始めた。
「これからあなたは自分とたくさん向き合う事になる。
何が必要か?何をしなければいけないか?しっかり考えなさい」
「シン!あなたはプロになるのよ!」
何だか気が引き締まった。
しばらくして、雑誌の専属モデルの話やメーカーのイメージモデルの話やらがきた。
次第に恐くなってきたが…俺の中に眠っていた熱いものが込み上げてくるのを感じた。
俺は、デカ女の絶対的な自信の意味を知りたくなった。
「あのさ〜。今夜付き合ってくんない」
「いいけど。」
俺は、居酒屋にデカ女を誘った。
「モデルやらないの?」
「わからないの。あの頃の自信を超える自分になれるか?でも、これは…出来ればの話。出来ないのよ。」
「あの事…。」
「えっ…。あぁ…社長が口にしたんだったわね。あの事…か…。」
しばらくデカ女は、外を眺めていた。
「大切なもの なくしちゃったんだ」
「大切なもの?」
「そう…。大切なもの。恋人と新しい命を一緒に。私がモデルだったから」
「…」
「私、あの頃全てが手に入ると信じて疑わなかった。そんな私に駄目を言ってくれたのが彼だった。
彼は、常に平常でそして謙虚で、周りの人を優しく包んでくれる人だった。そんな彼を私は…」
「どうしたの?」
「彼、自分で命を絶ったの…。」
心が締め付けられた。