僕はいつもの居酒屋で、初めて日本酒と焼き魚を一緒に注文した。
「最高だろ?」オバケが言った。
「美味い」僕は言った。「だけど最高じゃない。マネじゃダメって事かな。自分で色々やってみないとダメなんだ」
「でも今の世の中に模倣じゃないモノなんてない。違うかい?一見、完全なオリジナルでも、それは時の偉人の模倣の延長線上にあったり、あるいは、過去の自分の模倣さ。現代に起こる全ての事柄は誰かのマネ事にすぎない。自分で色々やってみるのは良い事だとは思うけどね」
全部マネ事?それは間違ってるよ、とオバケに言いたかったが、彼の言っている事はたぶん正しい。
でも、これを正しいと認める思考も、誰かの猿まねにすぎないんだ、僕の脳みそが僕に言った。
骨だけになってしまった、焼かれた哀れな魚は、少し笑ってるような気がした。そして、グラスの底に溜まった日本酒は、何か間違っていて汚らわしい液体に見えた。
「なんか淋し過ぎないか?」僕は言った。
「ああ」オバケは答えた。