オバケ4

はこもの  2006-09-10投稿
閲覧数[416] 良い投票[0] 悪い投票[0]

僕はいつもの居酒屋で、初めて日本酒と焼き魚を一緒に注文した。

「最高だろ?」オバケが言った。

「美味い」僕は言った。「だけど最高じゃない。マネじゃダメって事かな。自分で色々やってみないとダメなんだ」

「でも今の世の中に模倣じゃないモノなんてない。違うかい?一見、完全なオリジナルでも、それは時の偉人の模倣の延長線上にあったり、あるいは、過去の自分の模倣さ。現代に起こる全ての事柄は誰かのマネ事にすぎない。自分で色々やってみるのは良い事だとは思うけどね」

全部マネ事?それは間違ってるよ、とオバケに言いたかったが、彼の言っている事はたぶん正しい。

でも、これを正しいと認める思考も、誰かの猿まねにすぎないんだ、僕の脳みそが僕に言った。

骨だけになってしまった、焼かれた哀れな魚は、少し笑ってるような気がした。そして、グラスの底に溜まった日本酒は、何か間違っていて汚らわしい液体に見えた。

「なんか淋し過ぎないか?」僕は言った。

「ああ」オバケは答えた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 はこもの 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ