デカ女は、続けた。
「私が、彼を追い込んでしまったの。
私は、モデルの仕事に陶酔していたわ。
彼はトップモデルの彼氏という見方でしかなくなり、そんな周りの眼に踊らされ…。
わたしもいつの間にか、彼をそんな眼で見てしまっていたの。
彼は、仕事上の悩みを抱えていたのに、私は、聞く耳をもたなかった。
3日後、彼は誰にも迷惑をかけないように、山の中で変わり果ててしまった。」
デカ女の眼が微かに光った。
泣くのを必死にこらえているようだった。
「彼は、遺書を残していたの。
『今までありがとう。君は一流のモデルだよ何時までも輝いていてね。
一番のファンより』
それだけ。辛いとも助けて欲しかったとも書かないで…。それが私の心を苦しめた。
それから 2週間後、忙しさや精神的疲労から倒れて…。私は自分の中に光った命を彼との命を亡くした。
馬鹿でしょ。
妊娠にも気づかずにいたなんて…。
私は、モデルが出来なくなったの」
「北條さんは、彼の遺書の心を受け止めてるの?」
「えっ…。」
「生意気な意見を言わせてもらうと、彼は、きっとどんな事を言われていたって輝いていたあなたの事が本当に好きだったんじゃないのかなぁ。
だから…愚痴るような言葉を遺したくなかったんだと思う。
前を向いていて欲しいと思ったんじゃないのかな?」
デカ女は、今にもキレるんじゃないかと俺は内心ビクビクしていた。
そんな俺の思いとは逆に一筋の涙が頬を伝った。
「本当にそう思う?」
「たぶん…。」
デカ女が口元を緩めたその表情がとてもキレイで…。
女を感じてしまった。
デカ女は、話を切り返してモデル論を語りだした。
「秦くん、モデルは一瞬の輝きを魅せられるかが勝負なの。カメラを向けられたその瞬間から。
あなたは、まだ 時間がかかっている。
明日、スタジオに3時に来て。
翌朝 スタジオでデカ女は独りまっていた。