誠吾のことが好きだった。
狭い世界の中で出会った一人だった。
分かっていた、分かっている。
僕は男で、男が好き。
ただそれだけだ。
「俺、あきちゃんのその笑いかた好き。」
誠吾と出会って二年が経とうとしている。
「好き」なんて言葉初めて聞いた。
「ははっ。そーなの?そんなの言われたことないよ。」
違和感を飲み込んで替わりに言葉を吐き出す。
僕はもう…君のことを…。
「同性に言うのも変だけど、かわいいと思うんだよねぇ。」
誠吾、酔ってるのかな?今日はなんだか調子が悪そうだ。
話しがあるからと呼び出されて居酒屋で晩御飯を一緒にしている。
正直もう会いたくなかった。あの頃の、誠吾のことが好きで好きで狂いそうだった自分を思い出したくない。
「俺、メグミと別れたんだよね。」
「えっ?」
うつむきながら紡がれた言葉には、諦めとも自責とも取れない音色が聞き取れた。
こんなときだけ僕を使うのか。
気が触れそうなほど君を好きだった気持ちを、知っているくせに。