01.
放課を知らせるチャイムが鳴って、皆帰りの支度を始める。
私も皆と同じく帰り支度をして、帰ろと席を立った。
「ねえ、華原さん。この後暇? よかったら遊び行かない?」
クラスの人にそう言われて、私は表情を曇らせた。
「ごめん。ピアノのレッスンあるから帰らないと……」
「あ、だよね。こっちこそごめんね。じゃ、また今度」
せっかく誘ってくれたのに……
私が教室から出て行こうとすると、教室の後ろから声が聞こえてくる。
「ほーら。やっぱりダメだったじゃん」
「そんなにレッスンの方が大事なのかなあ」
「付き合い悪いよね」
「しょーがないじゃん。華原さん、将来期待されてるんでしょー? そりゃ私たちと遊ぶよりレッスンの方が大事に決まってんじゃん」
「いいよねえ。生まれながらの天才ってえ」
いつもそう言われる。
その言葉は悲しいくらい私の胸に突き刺さる。
レッスンは大事だけど、友だちと遊びたい。
そう思ってるのに……
いつも誘いを断っているから、私には友だちがいない。
友だちが欲しいけど、皆から一線引かれててなかなか友だちができないでいる。
私はピアノが好きで、幼稚園の時からピアノを習っていた。
上手く弾けると、先生やお父さん、お母さんが誉めてくれたし喜んでくれた。
私は皆の喜んでる顔が見たくて、ピアノのレッスンを頑張って受けていた。
ピアノのコンクールではいつも好成績で、周りの人たちからは将来有望なピアニストになると期待されてきた。
私の将来の夢はピアニストになること。
これは幼稚園の頃から思い描いていた夢。
絶対に叶えたい。
それを叶えるためにやってるレッスンだもん。
休むわけにはいかない。
でも友だち欲しいなあ。
いつも、そう思う。