男は服の胸元から注射器を取出した。
なにやら緑色の液体が中に入っていた。
「いや〜、受けてくれるか。うれしいね。」
そういいながら男は戒の右腕の袖を捲っていく。
「では、遠慮なく。」
プスッ。
ためらう間もなく緑色の液体は戒の中に入っていった。
ビリビリと腕から全身に電気が流れていくような感じがする。
まるで身体中の細胞が活性化していくような感じだ。
しかし、それは間もなく収まっていった。
「これで魔法が…」
戒は喜びに内震えた。
しかし…
「いやいや、これだけだと身体から魔法を解放しただけでまだ実際に使えるわけではないよ。実際に使えるようになるにはそれ相応の訓練がいるね。」
「なっ!注射を打てばいいっていったのに訓練がいるのか!」
もう今すぐ魔法が使えると思ったのに。
戒は騙されたように感じた。
「まあ、実際魔法が使える身体にはなったんだからそう怒るな。」
この先魔法が使えるようになることには変わりはない。
戒は少し諦めたような感じで男に聞いた。
「それで訓練ってどうやればいいんだ?」
「薬が効くまで1日かかる。訓練に関しては明日またこの土手でいいかな?」
今すぐに魔法が使えないのは残念だが戒はその話を承諾した。
「なあ、おっさん。別れる前にあんたの名前ぐらい聞かせてくんない?」
「あら、まだ名乗ってなかったか。悪かったね。」
男はわざとらしくそう答えた。
「池見、池見和成だ。明日もこのぐらいの時間にここで待ってるよ。」
池見はそう名乗り土手を後にした。
まだ日は明るかったが、戒はいてもたってもいられないのでとりあえず家に帰った。