スタジオには、カメラマンとスタイリストと…
デカ女
「おはようございます」
俺の声がスタジオ中に響き渡るほど、閑散としていた。
「おはよう。秦くんこの二人は、昔からの仲間で私が、尊敬するプロ中のプロ」
「それは、言い過ぎだよオーリ。ねぇ?ジロさん」
「…(笑)」
「オーリ?」
「私のアダ名かな。モデル業界の人達はそう呼ぶの」
「なんでオーリ?」
「RIONA からとってついたのよ」
「なるほど…。」
それにしても
今日は、いったい何があるんだ?
仕事ってわけでもなさそうだ。
「時間がないから早速始めましょう」
「秦くん。昨日の話覚えてるわね。あなたがモデルとしてやっていく為に何が足りないのか?これは自分で感じないとダメなのよ」
「そこで見て 感じとって」
俺は、カメラマンのジロさんの横あたりに立たされた。
「ミッチーお願い」
デカ女は、そういうとスタイリストと一緒にスタジオを出た。
「オーリの心に火をつけたな…。君。アイツのあんな眼を久しぶりにみたよ」
ジロさんは、カメラを調整しながら俺に話しかけてきた。
「オーリは、君の才能を輝かせたいんだ。
トップモデルだったからわかるんだろうな…。そういう感覚。君、ちゃんと見てるんだぞ!」
ジロさんの眼が変わった。
ガチャ!
スタジオの扉が開いた。
振り向くとスタイリストがひとりのモデルを連れてきた。
シンプルな白のロングドレス姿。
ジロさんがカメラを覗いた。
モデルが近づいてくると同時に俺の鼓動が早くなっていった。
「秦くん。見てなさい」
俺は…その言葉を聞いて全身、鳥肌がたった。
その言葉が、モデルが言ったからだ。
あまりにキレイでモデルのオーラがばんばん出ていてモデルとデカ女が結びつくのに時間がかかった。
デカ女がカメラの前にたった。
一気に緊張感に包まれた。
スーッとデカ女が顔をあげた瞬間、別人だった。そして、顔があがったと同時にジロさんのカメラの音だけが響き渡った。
誰も声を発する事はない。
物凄い…。
凛とした表情で動きをつけていったと思ったら、ドレスを捲り上げもの悲しそうな表情になり…涙を流していた。
その後も様々な表情…いや…?感情が形となっていった。
撮影が終わり、出来上がった写真に驚かされた。全て別人。
表情が変わっただけの写真じゃなく、別人に見えた。
そして…。
ものすごく 綺麗 で…。
ドキドキしていた。
恋 なのか…?