12.
「撤退、撤退!」
その言葉と共に2発の銃声が聞こえてきて、男はケイゴに背を向けて歩き出した。
「命拾いしたね」
そう言って男は消えた。
*
右腕から流れてくる血は何とか止血できた。
ケイゴはふらふらな足取りで家路に急ぐ。
両親は殺されてしまった。
だからあの男たちが憎くてしょうがない。
あの銀髪の男の顔が今でも鮮明に思い出せる。
いつか両親の仇をとってやる。そう誓った。
家の前につくと、そこには人だかりができていた。
群集が見るその先には燃えている我が家があった。
「家が……父さん! 母さん!」
中には両親がいる。
助け出してあげなくてはいけない。
人垣をかき分けて、ケイゴは家の中に入ろうとするが警察官に取り押さえられてしまった。
「危ないからだめだ!」
火をつけたのはあの男たちだとすぐに思った。
帰る場所を失い、そこで待つ人も失った。
何もかも奪われた。
残ったのは、忌々しい思い出と右腕の傷だけ。
それは消えることなくあり続ける。
*
ケイゴが姿を見せたのは翌日だった。
「いやー、悪かったな。報告行かなくて」
へらへらとした口調で言うケイゴに、レイは腹立たしさを覚えた。
何かあったのかと思って心配してたのに、この態度はなんだと言いたかったが無理矢理飲み込んだ。
「丁度よかったわ。今からリュウカさんのところに行くの。一緒に来て」
「いいけど。絶対怒られるよな……」
「当たり前でしょ。さ、行くわよ」
レイに促され、渋々ついていったケイゴは案の定怒られるはめになった。