Part four # 双子 #
「おにいちゃーんっ!」
わたしは、家に帰るなり、荷物を玄関へ放り、おにいちゃんの部屋へと駆け込んだ。
部屋へ入ると、人影が見えた。
「は……つね?び、吃驚させんなよ……」
そういって、ため息をつくのは、わたしのおにいちゃん……霜月隼人。
わたしは、何かあればいつも、おにいちゃんに相談している。
話を聞いてくれて、解決しようとはしてくれるんだけど……一つ問題が。
「そんな吃驚してないで。ちょっと、相談があるの」
「相談……??」
おにいちゃんが首を傾げる。
「うん、……10年前、この近くにわたしと仲が良かった男の子、居たよね??」
「ああ、居たっけな……」
素っ気なく応えるおにいちゃん。
「居たっけ、じゃなくて居たの!……でねっ、その男の子が、わたしのクラスに転入してきて!でね――」
わたしの話が終わる手前。
ばさっ。
おにいちゃんの机の上にあったノートが、床に落ちた。
「おにい……ちゃん?」
「……初音。そいつの事が、好きなのか??」
何でそうなるんだろう。わたし、転入してきたとしか、言ってないんだけど。
――これが、問題。
「何で好きとかの話になるの!」
「な、ならそんな報告、しなくていいだろ!」
おにいちゃんが、落ちたノートを拾いながら、反論する。
わたしのおにいちゃんは……世間一般で言う、“シスコン”だ。
わたしの相談の種が、男の子だとわかると、その瞬間……その相談には手を触れなくなる。
勿論、あの男の子が去った時……おにいちゃんは、わたしが泣きわめこうが、完全無視だった。
「第一……相談ってなんだよ。そいつが何かしてきた、のか?」
目が。目が怖いです、我がおにいちゃん。
「そうじゃなくて……、その男の子の名前、“池内颯天”で間違いないよね??」
自分でも、何でこんな質問をしたのか、わからない。
何か……何かが、引っ掛かっている。
「知らん」
おにいちゃんの返答は、シンプルだった。
「ちょ……、何で知らないの」
「初音以外の奴なんか、興味ない」
お願いだから、興味をもって下さい。
「えぇ……じゃあ、“そーくん”は??」
「そーくん……??」
おにいちゃんが、眉を潜める。
「お、憶えてる??」
わたしは思わず、身を乗りだした。