「……“いっくん”じゃなくて??」
――いっくん??
「誰、それ……」
「ん?多分、そーくんとかいう奴の、双子の兄貴だよ。初音、いっくんいっくん言ってたじゃないか。……よく嫉妬した」
最後の言葉は無視するとして。
「兄?いっくん……」
わたしは、その名前を自分の記憶と照合してみる。
今考えれば考える程――約束の男の子が、そーくんなのかいっくんなのか、わからなくなった。
「……ありがとう」
そういって、わたしはおにいちゃんに背を向け、部屋を出た。
出る時、おにいちゃんが何か言ってたけど……聴こえなかった。