『うまい!!』
ギュッッ―ー‐
一言そう言ってから、
聖人は、あたしを抱きしめた。
ギュゥゥッッ―ー‐
うわぁ。
まだまだ序盤なのにっっ、
こんなに盛り上がっちゃっていいの?!
『‥‥‥う゛‥‥。』
『どうした?!奈央?!』
『ぷはぁ―――っっ。』
『???』
『ごめん!!緊張し過ぎて息するの忘れてたっっ。』
『マジで?!』
『はぁ‥はぁ‥はぁ‥‥ああ苦しかった!!』
『ぷっ‥ハハハハハッッ!!』
『そんな笑わなくたっていいじゃんっっ!!』
そんなに笑わなくたって――
テーブルの上には、
聖人が用意してくれたクリスマスケーキと、シャンパングラスが2個。
プラス、あたしが作ってきたオードブル。
『かんぱぁい♪』
『乾杯♪』
あたし達はジュースで乾杯をした。
『クリスマスと言えば、この曲だよな?“クリスマス・イブ”』
『あは。そだね。定番だよね。』
『気付いた?今かけてる“クリスマス・イブ”は、違うアーチストがカバーしてるんだゼ。』
『え?!ホントに?!誰?!誰?!』
『札幌出身のアーチストなんだケド、マジいいだろ?!』
『うんうん!!すごい声量だね!!』
『声楽の勉強も、ちゃんとして来たヒトらしいゼ。』
『へぇ。本格派だね。でも珍しいね‥‥。』
『何が?!』
『聖人ってロックしか聴かないじゃん。』
『ハハハ。そうだよな。俺もそう思う。』
あぁ。今日というこの日に、
日本中の何組のカップルが、
大好きなヒトと一緒に、
素敵な時間を過ごしているんだろう――
決して贅沢な事はなく――
決して特別な事はなく――
ねぇ聖人――
こんなにも質素な2人だけのクリスマスが――
2人にとっては最高のクリスマスだったよね――