いつも土手から戒の家までは自転車で10分ぐらいの距離である。
戒はその道をこれからのことを考えながら走っていた。
どんな魔法が使えるようになるのか、それをどんな風に生かしていくかなどそんなことばかり考えていた。
ふと気がつくと少し遠くのほうに戒とは逆方向に歩いてくる通行人がいた。
土手の道は町の中心から外れたところにありほとんど通行人はいない。
それでも普段は通行人になどを気にかけることなどないのだが、その通行人は普通とは少し違った。
年は戒と同じぐらいであろうかそれより少ししたぐらい。
きらびやかに光る腰までまっすぐに伸びた銀の髪。
気の強そうな吊り上がった目にルビーのように赤い瞳。
美しく整った顔立ち。
戒の身長(170cmぐらい)よりも少し低い背の高さにスレンダーな体つき。
その身に纏う西洋の貴族の着るような衣服。
今まで見たことがないような美少女に戒は目を奪われていた。
戒が少女のほうを見ながら走っていると少女と目があってしまった。
戒は恥ずかしそうに目を反らし、少女の横を通りすぎる。
「開けてはいけないパンドラの箱が今開かれた…貴様はもう日常には戻れない。」
戒は急いで振り返り少女を探した。
しかし少女の姿はどこにもなかった。
不吉な言葉だけが戒の胸に残った。