Love song

玲唯 2011-05-08投稿
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03.


「なあ。もー1回弾いてよ」

「う、うん」


 言われた通りに、私はさっきの曲を弾き始めた。


 その人は私の横に立って、私がピアノを弾くのをじっと見ている。


「凄いよなあ。両手で違う動きしてる」

「凄い、かな?」

「凄いだろ! 俺できねえし。ちょっとやらせて」


 そう言うと、その人は私の隣に座って鍵盤に両手を乗せた。


 両手で弾こうとしてるみたいだけど、右手の動きに左手がついていってなくてぎこちない。


 私はそれを見て、小さく吹き出してしまった。


 するとその人は私の方に顔を向けた。


 やばい、怒られる……


 そう思って、私は身を縮めた。


「何笑ってんだよー」


 その人は笑いながら言った。



「あ、ごめんなさい」

「よし、許す!」


 縮めた体の力が一気に抜ける。


 見た目と違って全然怖くないんだ、この人。


 見た目で判断しちゃいけないって、まさにこういうことなんだなあ。


「なあ。名前なんていうの?」

「華原麻子」

「俺は友坂隆司(リュウジ)」

「友坂、くん……」



「名字じゃなくて、リュウって呼んで。みんなからそー呼ばれてんだ。俺マコって呼ぶし」

「うん。分かった」


 男子と話すことなんてなかったから、ちょっと緊張する。


 いきなり名前で呼ぶなんてできないよ……


「ご、ごめん。私帰るね」

「そっか。あ、邪魔しちゃってごめんな」

「ううん、そんなことないよ! 話しかけてくれて嬉しかった。私、友達いないから……」


 何言ってんだろ、私。


 友達いないとか引かれるに決まってる。私の馬鹿!


「じゃ、俺が友達第1号になってやるよ!」

「え?」


 予想外の言葉が返ってきて私は驚いた顔でリュウを見ると、リュウはニカッと笑って右手を差し出した。


「仲良くしよーな」

「う、うん! よろしく!」


 嬉しくて嬉しくて、私はリュウの手を握って握手をした。


 後から考えみると、恥ずかしかった。


 だって初めて男の人の手を握ったから。




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