水を撒いた砂場みたいに重たく灰色にくすんだ空は今にも雨を降らせるぞ、と僕を脅しているようだった。
山本を殺した車の
排気ガスを含んだ雨を
降らせるぞと。
僕はその雨にうたれる分けにはいかない。
僕がその雨にうたれることを僕は許さない。
どんなに間接的で、しかもそれが思い込みだったとしても、あの車と運転手から僕らに対して干渉していいはずがない。
そうだろ?
ペースを上げても家まではあと30分は歩かなければならない。
空は低く、薄暗く、その圧迫感で僕の心を急かす。
走って、家まで帰るかな
と思ったとき
「純っちゃ〜ん!!」
と明るい呼び声が聞こえた。
公園のブランコに座りながらブンブンッと、飼い主が帰ってきたのを確かめた犬がちぎれんそうになるほど尻尾を振るみたいに僕へ腕を振っている水穂がいた。