13.
真夜中。1つの靴音が暗い廊下に響いていた。
その靴音は建物の出口へと向かっていたが、それを阻むかのように1つの人影が立ちはばかった。
「リュウカ、行くな」
月明かりに照らされてソウの姿が露わになる。
リュウカは足を止め、どこか決意が込められているような強い瞳でソウを見た。
「お前が何と言おうとも、俺は行く」
「だったら僕たちも連れて行くべきだ! 1人で行くのは危険だ!」
「お前らを危険な目に合わせるわけにはいかない。これは俺だけの問題だ」
「でも──」
「ソウ」
ソウの言葉を遮り、リュウカはゆっくりとした足取りでソウに近づく。
ソウが投げかける言葉を聞いても、リュウカは瞳に宿した決意を消すことはない。
「俺は大丈夫だ。お前たちはここを護っていてくれ」
「リュウカ……」
「このことは、誰にも言うなよ」
そう言って、リュウカはソウの肩にポンと手を乗せその場から去っていき、ソウは不安を隠しきれない表情でその後ろ姿を見ていた。
*
森の奥深くにある小城。そこにリュウカの姿があった。
小城に入るなり武器を持った数十人の男たちに囲まれ襲いかかってくるが、リュウカはそいつらを容易く蹴散らす。
先に進もうとしたリュウカだったが、足を止めて前を見据えていた。
「……クロガネ」
「来る頃だと思ってたよ」
銀髪に黒のマントを羽織った男、クロガネは笑みを浮かべて言った。
リュウカはクロガネを睨みつけ、右手で拳をつくる。
「壊してやる。ここも、お前も、ダリアも!」
「さーあ。できるかなあ?」
リュウカは地面を蹴りクロガネの懐に潜り込むと、炎がまとった拳ファイヤーナックルをクロガネの腹に向かって放った。
しかしクロガネはそれを後ろに飛んでかわすと、またしても笑みを浮かべた。
「キミには壊させないよ。いや、壊せない」
するとクロガネの背後に無数の刃が浮かびだした。
その矛先は全てリュウカに向けられていて、クロガネが手を前に出すと全ての刃がリュウカ目掛けて飛んできた。