シンジ達と桃子はバイキング会場に先に行ってしまった。
美穂は遼一と二人になったのに気付いて、少し嬉しくなってきた。それを遼一に気付かれないようにわざとちょっと怒りながら言った
「もう、みんな勝手なんだから。でもお腹空きましたね。遼一さん?」
「…。ん? うん。そうだね。今の内ならまだ大丈夫かな。間に合うかな」
遼一は、ぼんやりして言った。
遼一さん、きっと色々考えてるんだ…。美穂は彼の横顔を、そっと見て思った。
「何に間に合うんですか?」
「うん。他の参加者に会わずに食事が終わるかなって思って」
「私達は2位と3位だから、今なら最低1位のアヤチームに会うだけですね。でも…」
「でも?」
「シンジ君達って…。いっぱい食べそうだし。吉原さんって、食べるのスッゴい遅いんですよ」
「やっぱりか。仕方ない。こうなったら、他のチームの情報を集めよう。危険のない範囲で。吉原さんはシンジ君に任せてもいいかなぁ。カンちゃん、出来るだけ俺から離れないで」
美穂は、彼の口から夢のようなセリフが聞けてますます嬉しくなった。
「は、はい。分かりました」
「じゃあ、俺達も行こうか。あ、チェックインはしてからがいいかなぁ」
うふふ…。俺から離れないでって…。うふふふふ。うれしい。レースの事だって、わかっててもやっぱりウレシー!美穂は目がハートになっていた。
はっ!チェックイン?そうか!遼一さんと同じホテルに泊まるんだわ。しかも温泉あるし!どうしよう。混浴とか誘われたら!
だって俺から離れないで、だもん。
「どうしたの?カンちゃん?」
もはや、冷静なのは遼一だけかも知れなかった。