『視覚でおいきれぬ攻撃に、身体が無意識に反応していた。
どうやらコゾウの水晶眼は本物のようだな。
…たが、惜しむらくはその能力に身体能力がついていけぬ事か」
どんなに段蔵の攻撃を先読みできても、かわせぬのならば意味がないのである。
今の攻撃を試金石として仕掛けた段蔵は、その結果に昂揚していた。
半次郎の一挙一動に垣間見る、無尽講の才能と可能性に。
段蔵にしてみれば余裕を残した動きではあったが、それに反応できる相手に出会えたのは、この十年に片手で数えるほどしかなかった。
「……お前、面白いな。
いいぜ、相手をしてやっもっ!」
ゆっくりと微笑する段蔵。
「ワタシがそれを傍観するとでも思ったのか?」
徐にあゆみだすノア。
その行動を鼻白む段蔵は、億劫そうに口をひらいた。
「殺しゃしねぇさ、ただ戦闘の何たるかを教授してやるだけだ。
今のそいつじゃ、俺に指一本触れられねぇだろぅからな」
段蔵の言動を、ノアは訝しく感じていた。
だが、口からの出任せでもないと考えていた。
殺意があるならば、意表をつかれた先刻の攻撃の際に、実行できたはずなのだから。