流狼-時の彷徨い人-No.71

水無月密 2011-05-18投稿
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『視覚でおいきれぬ攻撃に、身体が無意識に反応していた。
 どうやらコゾウの水晶眼は本物のようだな。
 …たが、惜しむらくはその能力に身体能力がついていけぬ事か」
 どんなに段蔵の攻撃を先読みできても、かわせぬのならば意味がないのである。


 今の攻撃を試金石として仕掛けた段蔵は、その結果に昂揚していた。
 半次郎の一挙一動に垣間見る、無尽講の才能と可能性に。

 段蔵にしてみれば余裕を残した動きではあったが、それに反応できる相手に出会えたのは、この十年に片手で数えるほどしかなかった。


「……お前、面白いな。
 いいぜ、相手をしてやっもっ!」
 ゆっくりと微笑する段蔵。

「ワタシがそれを傍観するとでも思ったのか?」
 徐にあゆみだすノア。

 その行動を鼻白む段蔵は、億劫そうに口をひらいた。
「殺しゃしねぇさ、ただ戦闘の何たるかを教授してやるだけだ。
 今のそいつじゃ、俺に指一本触れられねぇだろぅからな」


 段蔵の言動を、ノアは訝しく感じていた。
 だが、口からの出任せでもないと考えていた。

 殺意があるならば、意表をつかれた先刻の攻撃の際に、実行できたはずなのだから。




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