『どうしたの?』
アキは、泣いているカズヒロを心配した。
「ここで、俺は一人になった。」
『…何かあったの?』
カズヒロは、アキを直視できず、その質問にもたじろいでいた。すると、
『いいよ。話したくなかったら。』
アキは、笑ってくれた。
「ありがとう…。じゃあ、帰るか。」
アキとカズヒロは、浅草から電車を乗り継いで、帰ることにした。
まだアキとカズヒロが着かない、白愛高校前駅。
「帰ってくるところを、鷲掴みにするのよ。」
ユミは、タクヤに告げた。
「ユミさんまでここに来るなんて、相当アキを連れ去りたいんだね。」
タクヤも、いつもより声が低い。
「店の売り上げが懸かってるの。」
ユミとタクヤは、2人が来るのをずっと待っていた。すると、
『まもなく、列車が参ります。』
改札にも聞こえるアナウンス。
「そろそろ…ね。」
ユミは、ずっと餌を待っている肉食動物のように、アキとカズヒロを狙った。
「今日、どうだった?」
『楽しかった。』
まだ何も知らない2人。改札を出ると、
急にタクヤ、ユミが襲ってきた。
「あぁ!」
アキが突き飛ばされた。
「あ…アキ!」
カズヒロが止めに入るが、その前にタクヤが立ちふさがった。