俺のは、あの『白い封筒』の事ばかり考えてしまっていた。
デカ女は、いつもと変わらず忙しそうにスーパー秘書ぶりを発揮していた。
話す機会もなく、2週間が過ぎようとしていた。
ある日、雑誌の専属として俺の特集をくんでくれるかもしれないという話があがった。
あの社長が、がんばってくれたようだ。
雑誌の編集部が何枚かイメージのテスト撮りをしたいという事で俺は、デカ女とタクシーで向かった。
(ちなみに、社長は海外組とショーの打ち合わせにいった。)
デカ女を俺につかせるとは…相当心配らしい…。
俺は…タクシーの中で頭の中のモヤモヤを直接ぶつけた。
「ねぇ?」
「何?」
「この間ジロさん来たでしょ。何かあったの深刻な顔してたから…」
「別にないわよ。」
「…?」
「何よ。その奥歯にモノが挟まった感じは?」
「白い封筒が…辞めるの?」
「プッ…何でこのくそ忙しい時に辞めなきゃいけないのよ!!バカな事気にしてないで、このテスト撮りに気持ちをぶつけなさい!今日がモデルとしての勝負の日なんだという事を忘れないで」
俺は…ほっとした。
嘘かも知れないが、デカ女が今、側にいてくれて背中を押してくれた事で俺は、切り替えられた。
撮影現場には、ジロさんが助手と準備をしていた。
「ジロさん!!今日は、よろしくお願いします」
ジロさんは、俺の側に近寄ると耳打ちした。
「(この間の撮影の事は、内緒だぞ。でも…あの時のRIONA の言葉と顔心に刻んでな!(笑))」
「よろしくお願いします」
俺は、控室で衣装のチェックをしていたデカ女を鏡越しにみていた。
いつのまにか、俺は、いつもデカ女を追っている。
何だか 心地よい。
恋とは違っていた。
衣装を着け、スタジオに入る瞬間、『バシッ!』
デカ女が背中に気合いをいれた。
俺は、前を向いた。
今は、今の自分に集中しよう。
俺は、俺なりのストーリーで撮影に向かった。
ジロさんの眼が変わった。
本気の男の眼差しだった。俺ものみ込まれないように、俺は、俺を演じた。
撮影は、8着分の衣装をそれぞれ100枚以上撮ったようだった。
「はい!ラスト!」
(カシャッ)
「お疲れさま。」
「秦くん!」
「ジロさん!ありがとうございました」
「化けたな!ハハハ」
笑いながら出ていった。
2週間後、特集が正式に組まれる事に決定した。
お祝いにデカ女と呑む事になった。
デカ女の家でだ。