ここは夢か現実か境のない世界。
しかし、現実からははるか遠ざかり永遠の夜が続く世界。
そんな世界の真ん中にただ一つぽつんと佇む古城。
その古城の中。家一軒がまるまる入るくらい大きな広間の奥にある玉座。
その玉座へゆっくりとかつ優雅に舞い戻る銀色の少女。
「どちらにお出かけで?お嬢様。」
玉座の横に控える執事らしき乙女。
「始まりの元凶を確認してきた。くっくっく。あれはよい駒になるやも知れん。」
銀の少女は不敵に笑っていた。
戒は昨日と同じぐらいの時間に土手へと向かった。
一体どのような訓練をするのだろうか。どのような魔法が使えるようになるのだろうか。
昨日の不安を余所に戒はまた胸を期待に膨らませていた。
昨日と同じ時刻同じ土手。池見は戒を待っていた。
ただ昨日と違うのは池見が昨日のラフな格好ではなくスーツを来ていたこと、そして近くにリムジンを止めていることだった。
「やっぱり来てくれたか。待っていたよ。」
池見は嬉しそうに戒に話しかけてきた。
「なあ。なんだその車は?ここでやるんじゃないのか?」
「さすがにここだと人目に付くさ。一応極秘事項なんでね。場所を移さしてもらっていいかい?」
戒はなんとなくそんな気がしていた。
戒は黙って車の一番後部の座席に乗り込む。池見はその向かいになっている座席に腰掛けた。
2人が乗り込むと車はゆっくりと走り始める。
それと同時にシャッターがかかり運転席側が見えなくなり、窓もスモークがかかり見えなくなった。
「おい、なんだよこれは?」
「悪いねぇ。これから研究所に向かうんだけど、これも一応極秘事項なのさ。不安ならやっぱり止めとくかい?」
池見は少し申し訳なさそうにそう答えた。
戒は少し不安に思ったがここで引き返す気にもならなかった。
車は一時間くらい走り続けた。そして目的地へとたどり着いた。