「残念なのは分かるよ。アキという大切な彼女を、突き飛ばされたんだから。」
カズヒロは、タクヤの胸ぐらを掴み、一発殴った。
「アキ!」
カズヒロがアキのもとへ手をのばす。すると、
タクヤが後ろからカズヒロを殴ってきた。
「ぐっ…。」
「アキは…俺のおもちゃだ、ユミ、持っていけ!」
「分かった。」
ユミは、抵抗するアキを無理矢理車に乗せた。
タクヤとカズヒロの攻防が続く。
「アキをかえせ!」
「ダメ。」
タクヤはカズヒロを殴ると、その隙に車に乗った。
「アキ…。」
血が滲んでいるカズヒロの顔には、もう追いかける力はなかった。
「くそ!」
カズヒロは、愛する人を守れなかった悔しさに苦しんでいた。
「これから…どうするんだよ…。」
カズヒロは途方に暮れた…。
これから、どうやって生きていこう。
アキの叔母さんに…何て言おう。
また俺を…ひとりぼっちにする気か。
様々な思いが交錯して、絡み合って、カズヒロの心が痛む。
しかし、今行かなくてはならないところが。
アキのアパート。
カズヒロは、インターホンを押した。
「はい?」
叔母のアツコが、気さくに扉をあけた。
「カズヒロくん…。」
「どうも…。」
「アキは?」
アツコはやはり、アキを心配した。
「アキはどこ?」
「それが…。」
するとアツコが、思いがけない一言を発した。