ザァー
という音が街を満たしていた。
少年は街を走る。
自分の帰るべき場所へと
暖かい場所へと。
レンガ作りの家が建ち並ぶ通りを抜け、街はずれへと急ぐ。
まだ電気もガスも通っていなかった時代、家からこぼれるランプの明かりだけが頼りだったーー
ゴロゴロォォ・・
「うわっ 光った」
少年の名はエイジア
有名警部の父をもつ
元気な少年だった。
今日も悪戯仲間と悪さをした帰り、雨に降られたのだった。
黒い髪を濡らしながらひたすらに走る
もうすでに日が暮れる時刻は過ぎている。
「父さんに怒られるんだろうなぁ」
エイジアが一人息子であるから彼の父親は門限には厳しかったのだ。
エイジアは一軒の家の前で足を止めた。
彼の家だ。
「ただいま〜」
妙に静かだ。
何かが違う
エイジアは無意識に拳をにぎる。
「うっ・・」
息が詰まる。
なんだこの臭いは・・
エイジアは
そばにあったランプに火をつけた。
「あ・・あぁ・・」
なんだこれ。
部屋はめちゃくちゃ。
血の海だった
ゴツ
「足になにか・・」
顔。
父と母の顔だけが
そこにあった。
顔だけが。
「うあぁあぁァぁあああああああああっ!!!!」
震えが止まらない
「あ・・・あぁ・・」
ゴトン
ふと見ると誰かが居る。
ピシャッ・・
青白い光のなかで
その男は笑っていた
ゴロゴロォ・・
「うあぁああぁあぁっ」
恐怖。
それがエイジアを包んでいた
「はははっ」
男は笑いながら窓を
突き破り、闇の中へと
消えていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はっ」
薄暗い廃屋で男は目を覚ました。
「あの日の・・十年前の夢」
男はーエイジアは
復讐を誓った
今ではエイジアはこう呼ばれる
殺し屋ファントムと・・