04.
「よう、マコ! 連れてきたぞー」
「ちょっと何よ。勝手に!」
「こいつ、永田未来(ミク)」
次の日、音楽室で曲の練習をしてるとリュウが突然音楽室に入ってきて、無理矢理連れてきたような感じの女の子の紹介を始めた。
その子は栗色の長い髪にメッシュを入れてて、凄く短いスカートで、私はその子に対してもちょっと怖いなって思った。
「あ。この子知ってる。天才ちゃんでしょ?」
その女の子の言葉が胸に突き刺さった。
影では、そう呼ばれてるんだ……
「華原さん、だっけ? 将来ピアノで期待されてるんでしょ? 親から英才教育うけさせられてさ、学校の先生は甘々らしーね。コンクールのことで新聞にも載ってたりするし。いい気になるなって、みんな言ってる」
別にいい気になってない。ただ私は期待に応えたいだけ。
でもみんなにそう思われてるのは凄く辛い。
「何だよそれ。そんなの勝手に言ってるだけだろ? こいつ、俺らよか真面目だし。いい気になってる感じ全然しないけど」
「ふーん……で、何でここに連れてきたわけ?」
「マコと仲良くしてやってほしいと思って」
リュウは私の友達をつくろうとしてるんだ……
するとミクっていう女の子はつかつかと歩み寄って来て、私の顔を覗き込むようにして見る。
「確かに、みんなが言うような感じしないよねー」
「本当?」
「何となくだけどね」
そう言うとその子は薄く笑って私の隣に座った。
「よろしくね。ミクでいいから」
「う、うん! マコでいいよ」
ちょっと怖いし、いろいろ言われたけど、ミクちゃんもいい人なんだって思った。
初めてできた友達。大事にしなきゃ。
「マコって、家どこ?」
「西町だけど……ミクちゃんは?」
「あたしも西町。一緒に帰る? リュウも西町だから、3人でさ」
「え、い、いいの?!」
私がそう聞くとミクちゃんはちょっと驚いた顔をして頷いた。
多分、私の食いつきように驚いたんだと思う。
初めての友達ができて、初めて友達と一緒に帰る。
楽しみで仕方なかった。