帰りの車の中、池見はまた戒の向かいに座っていた。
戒には気になっていたことがあった。
それは研究の話を聞いたときから疑問に思っていたことだ。
「なあ、池見。聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「どうしたんだい、突然?まあ、答えられることのできる範囲で答えるよ。」
池見はあっさりそう答えた。
「どうして、あんたたちは魔法なんて得体の知れないものを研究しようなんて思ったんだ?」
池見は少し困った顔をしていた。
どうやら答えにくい質問らしい。
「う〜ん、この研究は俺たちが生まれる前から続いてきたものだからね。正直研究のきっかけはよくわからないさ。まあ、今の研究の目的ならあるけどね。」
「ああ、それならその目的を聞かせてくれ。」
少し聞きたいことと違う気がするが、研究に協力する以上その目的は知っておきたい。
「戒くん。君は今の日本はどういう状態にあると思う?」
「は?それと今の質問と何の関係があるんだよ。」
「まあ、そういわず、関係があることだから答えて。」
池見は真剣な目をしていた。
「まあ、よくわかんねえけど、車とかテレビとか輸出とかしてるし、一応先進国だしそれなりに裕福なんじゃなえの?」
「はぁ。」
池見は残念そうな顔をしてため息をついた。
「なんだよ。お前が答えろっていうから答えたんだぞ。」
「いやいや、すまなかった。あんまり残念な答えだったんで。」
池見は話を続ける。
「君に細かい経済の話をしても無駄な気がするから大まかにいうけど、今の日本は大きな借金を抱えているんだ。君のいう車やテレビの輸出も確かにあるし、それ以外にも漫画やゲーム、色んな産業が頑張っているさ。でもね、この国の借金は年々大きくなっている。戒くん、君はこのまま借金が増え続けるとどうなると思う?」
「う〜ん、日本という国がなくなるとか?」
「まあ、さすがになくなったりはしないと思うけど、一部の土地が日本でなくなるとか、国内での制限が今と比較にならないくらい厳しくなるとか、ひどいことになると思う。今の現状を打破するためには、並大抵の産業じゃだめだ。」
「なるほどな。そこで新しく魔法というエネルギーをもとに産業を作ると。」
池見はにやりと口もとを動かす。
「ご名答。そう俺たちは魔法をもとに新しい産業を作れないかと画策しているのさ。だからこそこの研究は極秘だし、ある程度の完成していないといけないのさ。」
そうこうしているうちに車は戒たちのいた土手にたどり着いた。
「ここでいいのかい?家まででも大丈夫だけど?」
「いや、自転車もここにあるし、自分で家に帰れるから大丈夫だよ。」
「そいか。まあ、今日は疲れてるだろうから家でゆっくり休んでくれ。次は明日でいいのかい?」
夏休みはあと10日ぐらいしかない。
学校が始まるとそんなに行けなくなるだろう。
「ああ、明日も頼む。今日はありがとう、池見。」