天使のすむ湖48

雪美  2006-09-11投稿
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キヨさんに白しか着ない、香里のことを俺は尋ねてみた。
「それはですねー実はお父様は林忠彦と言いまして、白い色を使わせたら世界一と絶賛されたことがありまして、それで白の画伯と呼ばれていましたからねーその影響から喪服や特別な学生時代の制服以外では白を身につけているんです。」
要するにファザコンである。でも仕方がないのかもしれない、唯一守ってくれた存在が父親だったのだろう。その父も若くして亡くなり、心細い中現れたのが、葛巻正明氏だった。どれほど孤独に耐え、性的暴力に耐えて泣いただろうか・・・香里は何も悪いことはしていないのに・・・なんと残酷な運命だろう。

すると、俺だけが唯一の光なのかもしれない、最後に残された光・・・
俺に何が出来るだろうか?心を守れているのだろうか・・・
入院させるのは、逃げにならないだろうか?
自問自答していた。
いくら考えても、これで良いということはない気がしていた。


 二、三日して、少しずつ香里の体調が良くなると、入院について俺は聞いてみることにした。
「あくまでも先生からの提案なんだけど、病院の方が良いんじゃないかと言われてねーまだ返事はしてないんだけど・・・」
香里は深刻な顔になり、
「一樹は私が病院にいた方が安心なのね・・・」
と言われてしまった。
「そうじゃないんだ、」
と否定しようとしたが、
「じゃあ何でそんな事言うの?私が入院しないって知ってるのよねーなのに、一樹からそんな言葉聞くなんて・・・・」
頭を抱えてしまった。俺はあわてて
「違うんだ、あくまでも一つの方法として聞いただけなんだ、ただ俺にも何かあったらと言う不安はあるよ、だから聞いただけで、香里がここが良いならそれでいいんだ、俺が決めることじゃない、香里が決めて良いんだよ、俺はその選択に従うだけだよ・・・」
そこまで言い終わると、香里はしくしく泣きながら
「入院はしないわ、そう言ったじゃない、好きな場所で死にたいの、好きな人に見送られて死にたいの、それがいけないことなの?私が見送ってほしいのは、大好きな一樹だけよ・・・」
俺にしがみついていた。



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