家に帰った戒は疲れはてていた。
2階にある自分の部屋に戻るのも面倒だった。
戒は夕食を待ちながら居間にあるテレビをボーッと眺めていた。
「………」
テレビの声など疲れててほとんど耳に入らなかった。
そんな中あるニュースだけ耳に入ってきた。
「ニュースの時間です。昨夜○○県××町の家に強盗が入りました。」
「へえ〜、○○県××町に強盗ねえ。ってこれうちのすぐ近くだ。」
「犯人は家に在住の老夫婦2人をナイフようなもので殺害し、現金数万円を奪って逃走しました。犯人は依然として捕まっておらず、現在近辺を警察が巡回しています。」
どうやら犯人は捕まっておらず、この辺にいる可能があるらしい。
−強盗…か。嫌なことを思い出した。あの事件がなければ葵もあんなにならなかっただろうな−
強盗事件が起こったのは10年ほど前のことである。
その頃、神谷葵には10歳ほど離れた兄がいた。
名前は神谷洸(こう)。
とても優しくて面倒見がよかった。
葵もその頃は明るくて活発で洸と遊ぶとき戒や明も引っ張り回し町中を駆けずり回っていた。
葵の家は近所でも評判の仲良し家族だった。
10年前の事件はそんな幸せな家庭を破壊した。