こんな夢を見た。
私は兵隊であった。
私は兵隊になどなりたくなかった。
しかし時代と社会は兵隊を欲していた。
兵隊にならないものは腰抜けと罵られ共同体から除外された。
私はやむなく兵隊となった。
しかし私は臆病で、勇ましく戦うことなどできなかった。
人を傷つけるなど恐ろしくてとてもできなかった。
そんな私を皆が笑った。
卑下し差別し侮った。
私は仕方ないと思った。
自分は恥ずべき人間であると。
やがて戦争が終わり、私は故郷に戻ってきた。
しかし心身ともに疲れ切った私は帰路の途中で動けなくなってしまった。
のどが渇いてしょうがない。
たが水場はずっと遠くにあり、とてもそこまで歩けそうにない。
すると瓶に水を汲んできたらしい少女が歩いてきた。
少女は一抱えもある瓶をとても重そうに運んでいる。
私は一口でいいから水を飲ませてほしいと頼んだ。
私を少し見つめてから少女は言った。
全てあなたにあげます。
好きなだけ飲んでください。
私は泣いた。
少女に何度も礼を言い、泣きながら水を飲んだ。
それから少女と私は春の花が咲く土手に並んで座り話をした。
私は自分について様々なことを話した。
兵隊になりたくなかったこと、しかし拒否する勇気もなかったこと、臆病で馬鹿にされ続けたこと、そして、そんな自分を恥ずかしく思っていたことを話した。
少女は私の話を聞き終わると言った。
私はそれが悪いことだと思いません。
人を傷つけることの何が勇ましいのでしょうか?あなたは優しかっただけです。
私はまた泣いた。
少女の言葉を信じてみよう。
もう誰に何を言われても気にするものか。
胸を張って生きてこう、私はそう思って空を見あげた。
ああ、空が青い。
私は生きる。
私の意志で。