その頃カズヒロは、電車に乗っていた。
一刻も早くアキを救いたい。それだけの気持ちを胸に。
アキは、ユミが経営しているキャバクラで、早速働かされていた。
「大人ね。ドレス着ると、17歳とは思えない。」
ユミに認めてもらったアキ。アキは今すぐ出ていきたい気持ちで一杯だった。
「何も考えずに仕事しなさい。すべては私の店のため…。頑張るのよ。」
『…。』
アキは、強引に店内へ連れていかれた。
タクヤは、その光景を見て笑っていた。
「あ、あとこれ。メモ帳。お客さまとの会話に使い…。」
そう言いかけたとき、アキはそれを床に投げつけた。
「何するの…ここまで来て、まさか逃げる気?」
『私はこんな汚れた仕事、したくありません。』
「何?」
タクヤも顔に皺を寄せた。
『私には…行くべきところがあります。』
そう告げて、アキは店を飛び出した。
「おい、待て!」
タクヤは追いかけた。でも、目の前に1人の男が立ちふさがった。
「…カズヒロくんか。」
タクヤは低い声でカズヒロを睨み付けた。
「アキにこれ以上近づくな。」
『カズヒロ…来てくれたんだ。』
アキは夢のようで、信じられなかった。