「帰るぞ…。」
カズヒロは半ば強引に、アキを連れ戻した。残された2人は、ただ立ち尽くすしかなかった。
「結局、2人の愛を壊すことは出来なかった…。」
タクヤは独り言のようにつぶやいた。するとユミは、
「あなたは、それが目的で、私と手を組んだんでしょ?」
「え…まぁ、そうなるかな。」
タクヤは笑って答えた。
「…どうして?」
「…分からない。」
するとユミは、どんどんタクヤの核心に迫る。
「本当はアキさんのこと…好きなんじゃ…。」
「好きだよ。」
タクヤの顔がなぜか、みるみる穏やかになっていく。
それはまるで、アキの…。
「この体を借りられるのも、あと少しだから。」
一方2人は、デートの帰りで夜も更け、終電に間に合わなくなってしまった。
「お金…ある?」
カズヒロが聞くと、
『持ってない。ドレスに着替えさせられた時、貴重品は置きっぱなし。』
「そうか…俺もこの金、使うわけにはいかないし…。」
『…なんかごめん…。』
お金をかけて私を助けてくれたカズヒロを、アキは申し訳なく思った。
「いや、俺も助けたいっていう気持ちがあったから。」
『…本当にありがとう。』
夢のよう、まさにカズヒロは、私の理想。