戒が気が付くと辺りは真っ暗で何も見えなかった。
「痛っ!」
どうやら自分は何者かに頭を殴られ気絶していたようだ。
戒は痛めた頭を触ろうとしたが手が動かない。
縄か何かで後ろに手を縛られているらしい。
幸い足は縛られてないようだが。
暗闇に慣れてきてゆっくりと辺りの様子がわかってきた。
「なっ!」
戒は自分が置かれている状況をやっと理解した。
戒が倒れていた場所は戒の家の居間。
そして戒の周りには戒の他に3人の人間が戒と同様縛られたまま気を失っている。
そのうち2人は戒の両親。そして残り1人は明だった。
戒の家は襲われたのだ。
何者かの手によって。
「おお、やっとお目覚めかい。」
廊下からゆっくりと男が居間に入ってくる。
歳は30代後半から40歳ぐらい。
きちんと整った髪型に、しわ一つないスーツ姿の男。
どこにでもいそうな普通のサラリーマン風の男だった。
「誰だよ。あんた。」
戒は下から男をにらめつけた。
「おいおい僕が誰だって?はははは。はは、君面白いこというね。君のような馬鹿そうな学生だってニュースぐらいみるだろう?誰だってこの状況を見ればわかる。」
「ニュースに出てた強盗か…。」
「その通り。」
男は嬉しそうににやついた。
「それじゃ、目的は金だろ?とっとと金持ってどっかに行ってくれよ!」
バキッ!
男の蹴りが戒の顔面を直撃した。
「がっ!」
戒は痛みに耐えられず床を左右に転がり悶える。
男はそんな戒の様子を見ながらニタニタしている。
「君の、いや君の家族の命は僕がにぎってるんだ。言葉遣いには気を付けてくれよ。」
「それに僕の目的は金なんかじゃあない。僕は別にお金に困ってないからね。そんなもののために強盗なんかしないさ。僕が求めるものはもっと刺激的なものさぁ…」
居間のガラスは割られている。風が入りカーテンが揺らぎ、月の光が男の顔を照らす。
男の顔は酷く醜く歪んでいた。